ヲタを辞めよう!

AKB48劇場という小宇宙

私は2007年〜2012年まで「おたく」を経験しました。それ以降は、ここで起きていたことをまとめておたくの世界を文章化する活動をしております。今回は、現代アイドルシーンを代表する「AKB48劇場」について取り上げます。

劇場公演へ

私がAKB48劇場で公演を見たのは2007年6月10日のことでした。AKB48が誕生したのは2005年12月8日だったため、すでに1年半が経過した頃です。すいぶん古参に思うかもしれませんが、決して古参ではありません。

AKB48はチームA・チームK・チームBが既に存在していましたが、チームA・チームKのメンバーの中でTVなどのメディアに出演する「推され」とそうでない「干され」の差が分かれはじめた時期でした。そこでチームA・チームKは合同で「ひまわり組」として公演を行っていました。推されメンが多いグループ編成は「表メン」干されメンが多いグループ編成は「裏メン」と呼ばれていました。

当然人気は「表メン」の場合が多いのですが、劇場公演に通い続けていたヲタの中には「裏メン」に魅力を持った人も少なくありませんでした。

AKB48劇場公演がたくさん見れた時代

2008年当時はAKB48劇場の公演を「見るだけ」なら、比較的ユルく見れた時代でした。AKB48オープン当初は1,000円だったチケットは次第に2,000、3,000円・・・と上がりましたが、1日3公演あった日は3つ全て公演に入れたりしたこともありました。

公演を見るには、メールにて決められた日数前に指定されたアドレスに送信することだけで済みました。すると公演前日には結果が返ってくるという仕組みです。キャンセル待ちメールが来ることもあり、その番号が小さいほど公演に入れる可能性が高いことを意味しました。

劇場の入り口で代金を支払い、緑色のチケットと引き換えます。

↑こちらがチケットの半券です。

先ほどチケットが3,000円とお伝えしましたが、その場合女性と小学生〜高校生までは2,000円です。この1,000円分安いチケットの券面がピンク色をしていたために「ピンチケ」と呼ばれていたりしました。

そこから転じて、マナーの悪い学生に対して「ピンチケ」、複数形で「ピンチケ軍団」と呼んだりしていたこともありました。

初めて劇場公演を見たときの感想は「見れただけでも良かった」という一言でした。当時学生時代の友人・T君と観に行きましたが彼のほうが興奮していたくらいです。

私は静岡在住だったこともあり、遠方だった関係でそれから5ヶ月間公演を見ることはありませんでしたが、その間T君は一気に秋葉原の小宇宙にハマっていくのでした。

前田敦子との落書き2ショットポラの衝撃

2007年11月、久々に会ったT君に衝撃を受けました。BLTを購入しに劇場に来た時に会った生写真ヲタと一緒にいたのです。

T君はアルバムを何冊も抱えて、既に大量の生写真を持っていました。そしてT君のもとに次々と写真のトレードを希望するヲタが殺到していたのです!

それだけではありません。T君は当時チームAのエースとなっていた前田敦子さんとの劇場2ショットポラを持っていました。しかも、その写真には前田さんからのコメント(落書き)が書かれていたのです。

T君はこの5ヶ月間、S君というヲタと出会い、その人の仲間たちと劇場通いをしていたのです。前田さんとの2ショットポラは劇場公演後に撮影したとのことで、その2ショットポラ券の入手方法も把握していたのです。

劇場の中とヲタたち

2ショットポラ休日を利用して秋葉原のAKB48劇場に通い詰める生活を加速させていきました。

このとき見ていた公演は、チームA 4thステージ「ただいま恋愛中」公演です。

AKB劇場の公演に当選した人は、公演開始30分ほど前に劇場のロビーに集合します。そして、チケットに書いてある番号に沿って指定された場所に10人1列で並んでいき、揃ったところで入口前にあるビンゴマシーン(ガラガラ)を使って入場順の抽選が行われます。

関東以外の在住者には「遠方枠」という専用の枠があり、私はこちらを利用することが多かったです。遠方枠はセンターブロック6列目と決められていましたので最前列に座ることはできませんでしたがヒドい席でも無かったため安定した場所でした。

遠方シートのすぐ後ろは「立ち見最前列」なのですが 、入場の早い常連ヲタが“あえて”ここに陣取り「魂の叫び」を行います。曲やメンバーの自己紹介に合わせてお決まりのフレーズをかけたり、MCでのメンバーの話に呼応するなど、まるで会話が成立しているかのようなやりとりを劇場内でやってのけるのです。

私もヲタ活動の中でAKB48劇場の最前列に座れたことは数少ない経験でした。1〜2巡で引き当てないと難しいです。私が劇場公演で最前列に座ることのできた確率は5%ほどでした。

そのうえ劇場内には2本の柱が立っておりこの柱が死角となることがよくあるのです。

すなわち、立ち見最前ならメンバーの目線が行きやすく、声も届きやすいので好んで選ぶヲタが現れたということです。

2008年頃の劇場はとにかく面白いヲタがたくさんいました。劇場に行けば必ず公演に入っているようなヲタは良くも悪くも劇場公演の場を盛り上げていました。今では劇場公演に入れる確率が低くなってしまったため、そのようなヲタはほとんどいなくなってしまったと聞きます。

公演は1時間30分〜2時間程度で終了します。本来はここで終わりなのですが、このあと私は驚くべき光景を目撃したのです。