連続起業家・家入一真さんの最新刊を読了しましたので、感想を書いていきたいと思います。
さよならインターネット – まもなく消えるその「輪郭」について (中公新書ラクレ 560)
この本から様々なことに気づき、考えさせられました。
インターネットは「空気」になっていた
昔のインターネットは、全国どこでもすぐに繋がるワケではなく、電話回線を繋いでしばらく待つ必要がありました。これが2000年前後の出来事でこの接続方法を「ダイヤルアップ」と呼んでいました。
ダイヤルアップの特徴は繋ぐ際の「儀式」にありました。
「ピポパポポピポパポ・・・ピーヒャラヒャラ〜 」という音を聞いてアクセスしていたものです。参考までに書くと当時は定額使い放題ではなく、インターネット代と電話代は分かれていました。それがコミコミとなり月額980円で3時間まで使えます。接続速度は56kbpsです。Mbpsではありませんよ!
このように、ブラウザを見るまでに一連の動作が必要だった頃のインターネットは不便な部分もありました。しかしそれ以上にワクワク感がありました!
「ネットはしがらみのない別世界なんだ」と当時中学生の僕も思ったのです。
やがてブロードバンドが発達してスマホが普及するようになると常にインターネットと繋がった日常生活となりました。やがてネットが繋がることに対するワクワク感は無くなりました。
常時接続が実現し、そのあとはWi-Fiスポットの誕生でタダ同然で繋がるようになり「空気」のような存在となりました。家入さんは「この本で輪郭が失われた」と表現されています。
おそらく今の10代のネットユーザーは物心ついた頃から「ネットはあって当たり前」だと認識しているはずです。ネットの隆盛時に身を置かれていた家入さんが20年間の出来事を一つずつ解きほぐして回顧しているため、読んでみるときっと驚くはずです。
ネットとリアルの共存
ネットの中で生きると、行き着く先はどこなのか?
家入さんが書かれていた内容でシビれた一説がありました。
多様性が残存しにくい傾向の中、生き残ったプラットフォーマーたちは、ますます現実世界との接点を求めていくように思います。そして人である以上、誰しも人らしい、生々しさのある交流をしたくなる。だからこそ、人が大勢集うことのできるようなコミュニティ作りに気持ちが向いたり、旅や農業をしたり、体を動かしたくなるのかもしれません。
まさに今の私のことだ!
ネットが好きで部屋で籠ることが多かった私ですが、最近浜松で農業をはじめ、体力づくりもはじめ、そしてこの本を九州へ向かう電車の中で読んでいたという事実。
ネットは便利なツールですが、それだけで完結できないことをネットの先駆者は気づいていたのです。
私は以前家入さんの「我が逃走」を読んだことがありましたが(名著です!)、どちらかといえば現実社会をよりよくするためにネットを活用されてきたことを知りました。
「ノマド」や「ミニマリズム」が生み出され「スローライフ」が若者を中心に取り戻されたのは、ネットの恩恵によるところが大きいと思います。ネットによるそれ以外の変化点が「さよならインターネット」で解き明かされています。
ネットライフのこれから
そして家入さんは輪郭を失ったインターネットを取り戻すアイデアについても書かれています。これらを読んだ僕が感じたことはこれらのアイデアが「ネットライフのこれから」を知る上で大変興味深かったということです。
匿名と実名の区別が意味をなさなくなった今のネット社会で、これからの私たちはネットとどのように付き合っていけばいいのか?
もしネットによって本来持っていた個性を失っていたとしたら、本当の自分を取り戻すためにはどうしたらいいのか?
それを考えるきっかけとして、すべてのネット世代にオススメします!
さよならインターネット – まもなく消えるその「輪郭」について (中公新書ラクレ 560)